狩猟者になった。
愛を知りたかったからだ。
遡ること4年ほど前、当時好きだった人の言葉が今も粘膜に焼き付いて離れない。
首に手をかけられた状態で、殺していいかと確認された。
いいよと言えば、本当にやってしまうような人だったし、たまたま風が吹いたとか、そういう偶然の弾みで殺されかねなかった。宝物を見つけた子どもみたいな無邪気な瞳に、「どうして」と問いかけるのがやっとだった。彼は少し考えるようにして宙を見て、私の首にかけた手をゆるめ、それから私の隣に横になった。そして、耳元でこうつぶやいた。
「愛することがまだわからないから」
殺さないと愛することなんてわからないと思うと彼は言った。
私はその意味がわからなかった。
厳密に言うと、わかる気がしたけれど、わからなかった。
その瞬間から、私はその言葉に捕らえられてしまった。
好意が消えてなくなってしまっても、問いだけは残る。
私はその問いを抱えたままの身体を引きずり続けた。
十年ちかく住んだ東京を出てもなお、身体と決別することはできない。
引きずって、引きずって、日本の北の果ての土地まで引きずり続けた。
そうして、狩猟者になった。
愛を知りたかったからだ。
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狩猟の話は今後も少しずつ書いていこうと思っています。
これはその序章です。